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大阪高等裁判所 昭和54年(ラ)230号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一件記録によれば、相手方株式会社坂本建設と抗告人間に、昭和五三年九月二五日、姫路簡易裁判所において、相手方会社を申立人、抗告人を相手方とし、右両者間の同庁昭和五二年(ノ)第六七号工事代金請求事件につき調停が成立したこと、右調停において、抗告人は相手方会社に対し工事代金の未払残金一〇五八万四〇〇〇円の支払義務あることを認め、これを三回にわたつて分割支払う、相手方会社はいずれも昭和五三年一〇月一五日限り、同会社の費用で本件建物の所定場所の補修工事をする、相手方会社は抗告人に対し前記工事未払代金の支払完了と引換えに、相手方会社が抗告人に対し申立てている神戸地方裁判所姫路支部昭和五三年(ヨ)第一七九号仮差押申請事件はこれを取下げる。抗告人は相手方会社の右事件の担保取消に同意し抗告権はこれを放棄する、旨約されたこと、右調停内容を条項別に記載した調停調書(以下本件調停調書という。)が存在すること、相手方会社は、昭和五四年四月二一日付で、原裁判所に対し、右調停において抗告人が前記仮差押申請事件につきその担保取消に同意しているとの理由で本件担保取消決定の申立をしたこと、右申立には、本件調停調書の正本写のみが添付されていること、同裁判所が、同月二四日、抗告人が担保取消に同意しているとの理由に基づき、相手方会社の右申立を容れ、本件担保取消決定をしたこと、が認められる。

右認定事実に基づき判断するに、相手方会社は、右調停条項中、抗告人は相手方会社の本件仮差押申請事件の担保取消に同意し抗告権はこれを放棄する旨の条項を独立の条項とし、右条項に基づき本件担保取消決定の申立をし、原裁判所も右申立を正当としてこれを容れたことが明らかである。

しかしながら、右担保取消同意の条項を如何に解すべきかは、単に形式的な文言によるべきではなく、その調停が成立するに至つた経緯、条項全体との関連においてこれを把握すべきものである。記録ならびに前記調停条項を総合して判断するに、右調停は、抗告人、相手方会社間の請負代金の支払に関し、抗告人が相手方会社の工事にずさんな点があるとして、工事代金の一部を支払わなかつたことに基因して紛争が生じ、前記の如き調停が成立したものであり、条項一、二項が円満に履行された揚合、したがつて、代金の支払も任意に履行されたときには、相手方会社としては、仮差押をしておく必要がなくなるので、直ちに仮差押申請を取下げると共に、抗告人としても円満に解決した以上、仮差押によつて生ずべき損害を云為することなく、その担保取消に同意するというにあると解せられる。

しかるところ、記録によれば、相手方会社は工事の補修を完全になさず、抗告人も又相手方会社が工事の補修を履行しないとして代金を完済していないこと、そのため、相手方会社は本件調停調書を債務名義として、前記仮差押を本執行に移行した(この時点で仮差押は終了するものであるが)ことが認められる。

してみれば、抗告人が本件担保取消に同意していることは認め得ず、抗告人の右同意ありとした、相手方会社の本件申立ならびに同一事由に基づき、相手方会社の右申立を容れた原決定は失当というべきである。

(大野千里 岩川清 鳥飼英助)

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